「育児中に一番つらかったのは、産後のトイレすら行けない状況で夫が余裕でトイレに行く姿を見たときかも...」


Instagramで人気の育児漫画を描く漫画家・HYPかなこさんは、そう笑いながら振り返ります。フォロワーから共感の声が殺到したという投稿には、育児中の夫婦の本音が詰まっていました。


漫画家として子育ての記録を残す選択

HYPかなこさんは現在、漫画家・クリエイターとして活動しながら、夫の仕事を分担する形で画像作成やデータ作成のお仕事をしています。


2018年からInstagramで育児漫画の投稿を始めた彼女の作品は、リアルな育児の姿と夫婦の関係性を描いていることで共感を呼んでいます。


「小さい頃から漫画を描くのが好きでした。妊娠中にいろんなサイトで育児レポ漫画を見て、自分も参考になるものを発信したいと思ったのがきっかけです」


また、自分自身の記憶を残す目的もありました。「写真や動画に残せない部分をイラストで記録していきたいと思ったんです」とかなこさん。育児の忙しさに追われながらも、面白いエピソードがあればメモを取り、夜の自由時間を使って漫画にしているそうです。


感謝の気持ちを伝えあうことで変化した二人目育児

かなこさんの漫画で最も共感を呼んだのは、夫婦の育児分担に関する投稿でした。特に「夫が子どものイヤイヤに対応する姿」を描いた漫画は大きな反響を呼びました。


「2人目の育児が楽になったのは、私自身に心の余裕ができたのと、夫がより協力的になったから」とかなこさん。その背景には、1人目の育児中の「話し合い」があったといいます。


「1人目のときは産後の大変さもあって、夫婦でよく喧嘩したり話し合いをしていました。でも、その中で本音をぶつけ合って、冷静になって話し合うことを繰り返したんです。そのおかげで今はお互いを理解し合えるようになりました」


現在は夫の仕事が忙しくなり、ほぼワンオペ育児の状態だというかなこさんですが、それでも心に余裕があるといいます。「お互いの大変さを理解し、感謝の気持ちを伝え合うようになったからこそ、2人目の育児は楽になりました


お互いを思いやるというと、シンプルなことに思えますが、お互いがそう感じあえるようになるということは、なかなか難しいものですよね。



母乳育児の苦労—「もっと早く知っておきたかった」

出産や育児に関する情報は溢れていますが、かなこさんが「もっと早く知っておきたかった」と語るのは産後のケアについてでした。


「妊娠中はどうしても出産のことばかり考えていて、産後のことが抜けていました。でも本当につらいのは産後なんです


特に1人目の時に苦労したのが母乳育児でした。「出が悪くて乳首の形も悪かった。毎回の授乳が痛くて本当に大変でした。もっと早くクリームの存在を知っていれば、準備していたし、搾乳機も用意していたと思います」


その後、かなこさんはミルク育児を経験しましたが、ミルク育児にも課題がありました。「赤ちゃんがどれくらい飲んでいるかわからなくて、量の調整が難しかった」と振り返ります。


日本では母乳育児の推奨が強い傾向にありますが、かなこさんは「ミルクでも全然いいんですよね」と強調します。「母乳が出なかったら自分はダメな人間だと思ってしまう人もいるけど、そんなことないんです


妊活の長い道のり—「先が見えない辛さ」

かなこさんは2人のお子さんを授かるまでに、それぞれ不妊治療を経験しました。1人目は2年、2人目は3年の治療期間を経て、最終的に1人目は自然妊娠、2人目は顕微授精で授かりました。


「不妊治療は結果が努力に伴うものではないから本当に大変。」とかなこさんは言います。

不妊治療で最も苦しいのは「ゴールが見えない」ことだとかなこさんは言います。いつまで続けるべきか、どこで区切りをつけるべきかという判断も難しい。


そして不妊治療に関して欲しかったものとして「治療のチャートやロードマップ」を挙げます。

「ここまで行って、これがダメだったらこういう方向に進んでいくとか、その中ではこんな治療をしていくよ、というのがあると安心して受けることができるし、先も見通せると思いました」


これからの活動

現在、かなこさんは産後レポの続きを書きながら、新たな創作活動も計画中です。


「育児関係なく、ギャグ漫画の中に自己啓発要素を入れたものを作りたいんです。こういう考え方をしたら楽になるよ、ということを押し付けがましくならないように伝えていきたい」と意欲を見せています。


かなこさんの漫画には、お子さんの成長はもちろん、育児の大変さだけでなく、夫婦の関係性やコミュニケーションの大切さが描かれています。1人での育児は大変でも、理解し合い、感謝の気持ちを伝え合うことで乗り越えられるというメッセージが込められていると感じています。


HYPかなこさんプロフィール
漫画家・クリエイターとして活動。小さい頃から漫画を描くのが好きで、妊娠中に見た育児レポ漫画をきっかけに自身も育児漫画の投稿を始める。2児の母として、育児の記録を残しながら創作活動を続けている。